
目次
異動の準備を行う必要があるのは、従業員側だけではありません。従業員が異動先でもスムーズに業務を進められるよう、会社側でも事務手続きや備品の準備など配慮すべきことがあります。
このコラムでは、従業員と総務担当者別に異動が決まった際に行うべきこと、人事異動の種類や実施する目的などを詳しく解説します。
人事異動とは
人事異動とは、会社が人事権を行使し従業員の職位、勤務地や勤務条件などを変更する辞令を出すことです。主に会社の活性化や従業員のキャリアアップ促進のために行われ、従業員の労働環境に関わる重要事項であると言えます。
人事異動は無条件下では実施できません。しかし、就業規則に基づいて人事権を行使するため、定めがある限り異動や昇給などの主導権は会社側にあります。
行う時期は会社によってさまざまですが、決算の翌月を着任日と設定する場合が多いです。例えば、9月が決算の場合は10月1日、3月が決算の場合は4月1日となります。
人事異動の種類
人事異動の種類には大きく分けて、企業内と企業外のものがあります。企業内では、主に部署・勤務地・職位が変更となる異動、企業外では系列会社への転籍や出向があります。
人事異動の種類の詳しい内容は、以下の通りです。
企業内
企業内の人事異動には、部署異動や職位変更、転勤、昇格・降格があります。各内容を、以下で詳しく解説します。
部署異動
部署異動とは、従業員が現在所属している部署から別の部署へ異動することです。例えば、営業部からマーケティング部、総務部から営業部への異動などが挙げられます。所属していた部署と関連性が低く、業務内容が大きく変わる場合もあるでしょう。
部署異動は、スタッフ教育のために異動を行う「ジョブローテーション」や、欠員対応のために行われる場合が多いです。
職種変更
職種変更とは、事務職から技術職、営業職から経理職など業務内容が変更となることです。部署異動と同様、ジョブローテーションにより従業員に対するさまざまな挑戦や、業務経験を与える機会として行われます。
転勤
転勤とは、勤務地が変更となる人事異動のことです。例えば、本社から支社へ、現在勤務している支社から別の支社へ勤務地が変わることなどが挙げられます。転勤に伴い業務内容が変更となる場合もあれば、業務内容は変わらず勤務地のみ変更となる場合もあるなど、形態はさまざまです。
転勤は引越しを伴うイメージが強いものの、必ずしも住所変更が必要なものではありません。
昇格・降格
昇格や降格も人事異動の中に含まれます。昇格は課長から部長になど、役職や職位が上がることです。ポジションが変わることで仕事の幅も広がりますが、求められる業務範囲やスキルも大きくなります。
反対に、降格とは役職や職位が下がることです。主に業績低下や懲戒を理由に行われ、多くは減給を伴います。
企業間
企業間の人事異動には、転籍や出向があります。各内容を、以下で詳しく解説します。
転籍
転籍とは、現在働いている会社との雇用契約を終了して、異動先の系列会社などと新たに雇用契約を結ぶことです。転籍をした場合、従業員の給与や労働時間などの労働条件は、異動先の制度が適用されます。
転職の意味合いと混同されがちですが、転職は本人の意向、転籍は会社側の意向で異動が行われる点が異なります。
出向
出向とは、現在勤務する会社に在籍したまま、一定期間、系列会社など自社の関連企業で勤務することです。業務は出向先の指示に従って行うものの、労働条件は在籍している会社に準ずる形となります。
なぜ人事異動が行われるのか
人事異動が行われる理由は、会社によってさまざまですが、従業員の成長や会社の活性化が目的で行われる場合が多いでしょう。
人事異動が行われる理由について詳しく解説します。
従業員の成長を促すため
さまざまな部署で経験を積むことにより、幅広い知識や技術を身に付けることができます。従業員のスキルアップに繋がったり、視野を広げたりすることが可能です。
例えば、営業部からマーケティング部に異動した場合、商品販売に関するノウハウを今までよりも広い視点で見られるでしょう。
従業員の成長は、会社全体の活性化にも繋がります。
人材を最適に配置するため
人事異動では、会社側が従業員それぞれの能力を見定め、適材適所の人員配置を行う場合もあります。これは、「タレントマネジメント」と呼ばれるマネジメント手法の1つで、従業員の能力を活かすことや、企業全体の生産性向上にも寄与します。
資格取得をきっかけに人事異動を行う場合もあるでしょう。例えば、簿記資格を有する従業員が経理部に異動したり、TOEICの高スコアを有する従業員が海外事業部へ異動したりすることなどが挙げられます。
従業員を適材適所に配置することで、モチベーションやパフォーマンスの向上、新規事業の成功が期待できます。
組織の活性化を促すため
部署内のメンバーが固定されてしまうと、仕事の進め方が固定されてしまったり、新しいアイデアが生まれにくくなったりします。人事異動によりメンバーを入れ替えることで、部署内に新しい刺激が加わり、組織に変革をもたらすでしょう。
定期的に新たな人材を投入することで部署内の新陳代謝が促進し、組織の活性化が期待できます。
欠員や事業拡大が生じたため
前任者が退職や休職をするなど、欠員を補充する目的で人事異動を行う場合もあります。新規採用よりも手間やコストを抑えられるだけでなく、即戦力となる人材を確保しやすいことがこのケースで人事異動を行うメリットです。
また、事業拡大や新規事業を立ち上げる場合にも異動が行われます。事業を成功に繋げるため、実績や適性のある優秀な人材を異動させるケースが多いです。
人事異動の発表方法
人事異動の発表方法には、大きく分けて「内示」と「辞令」があります。2つの発表方法に関して、詳しく解説します。
内示
人事異動における内示とは、上司や担当者が異動する従業員本人に対して内々に伝えることです。内示は、社内外に異動することを発表する前に行われるため、基本的に口外禁止です。
内示を行う時期に定めはありませんが、異動の準備期間を与える意味合いも持つため、余裕をもって行う方がベターです。就業規則に「異動や転勤を命じる権利」等が明記されている場合は、やむを得ない場合を除き、原則断ることができないため注意が必要です。
辞令
辞令とは、会社が従業員の異動に関する決定事項に関して異動する本人に通知することです。内示との違いは、異動先や異動日など異動に関する具体的な内容が確定しているか否かです。
辞令は「辞令書」と呼ばれる決定事項が記載された書面や、口頭で通知するのが一般的です。辞令書の交付は法律で義務付けられてはいませんが、従業員に対して確実に伝える手段として有効になります。
誰がどのような辞令を受けたのかを書面に残しておくことができるので、トラブルを防止することにも繋がるでしょう。
異動の内示が出たら行うべきこと
異動の内示が出たら、異動者は引継ぎをスムーズに行うための準備をしなければなりません。また、会社側でも事務手続きなどを行うことで、スムーズな異動をサポートする必要があります。
異動の内示が出たら行うべきことを従業員側、総務担当者側に分けて解説します。
従業員が行うべきこと
まず、従業員が行うべきことについて解説します。
業務整理
異動後に後任者がスムーズに業務を進められるよう、自分が担当している業務を棚卸しし、引継ぎ資料を作成します。
引継ぎ資料には、担当業務の内容や業務の流れ、組織全体の目標などを記載します。取引先への対応方法や、業務を進める上で自身が工夫をしていた点を付け加えておくのもお薦めです。
後任者への引継ぎは、部署内に異動が周知されたら行います。後任者と業務を進めながら引継ぎを行うのがスムーズですが、難しい場合も多いでしょう。その場合は、いつでも引継ぎ資料が確認できるよう、書面やデータとして残しておく必要があります。
さらに詳しく業務の引継ぎについて知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
挨拶まわり
異動の告知許可が下りたら、取引先やお客様に電話で一報を入れましょう。後日、直接相手の所に出向き、改めてあいさつを行います。この場合、後任者が同行することで相手に安心感を与えられます。
スケジュールの都合や遠方のため出向くことができない場合は、直接伺えないことを謝罪する気持ちを伝えつつ、メールや電話で個別にあいさつをしましょう。異動先へのあいさつも忘れずに行うことが大切です。
身の回りの整理
異動の前日までに、自分が使用していたデスクやロッカーなど身の回りの整理や掃除を行いましょう。後任者が使用する書類やファイルは見やすく整理することで、引継ぎもスムーズです。
必要に応じて拭き掃除を行うと、清潔で綺麗なデスクとなり後任者も気持ちよく業務を進められます。
最終日のあいさつ
最終出勤日には、部署内でお世話になった上司や同僚にあいさつを行います。1人ひとり直接あいさつをする場合や、朝礼の時間など全体にスピーチをする場合もあるでしょう。どちらにしてもこれまでお世話になった感謝の気持ちや、異動先での抱負を伝えられると良いです。
必須ではありませんが、感謝のしるしとしてお菓子などのお礼の品を準備しておくこともお薦めです。
総務担当者が行うべきこと
ここからは、総務担当者が行うべきことについて解説します。
異動者の精神的なケア
人事異動では、今までの人間関係が変わったり、慣れない業務を行ったりすることでストレスを抱えがちです。転勤などで引越しを余儀なくされた場合も、引越しの手続きや環境の変化に対する不安を感じやすくなります。
日頃から従業員の声に耳を傾けることはもちろん、悩みや問題がある場合は一緒に解決策を考えるなど異動後のフォローも欠かさないことが大切です。
事務手続き
同じ職場内で異動を行う場合は、特に法定手続きはありませんが、住所が変わる転勤の場合は、さまざまな手続きが発生します。
社会保険の資格喪失と取得の手続きや、雇用保険の「転勤届」の提出などが法律で定められている手続きです。他にも条件によって必要な手続きがありますが、従業員がスムーズに異動ができるよう必要な手続きとなるため確実に行わなければなりません。
名刺の注文
異動後のあいさつ回りで名刺が必要となるため、異動が決定したら速やかに注文する必要があります。とはいえ、急な異動が発生する場合も多いでしょう。
名刺のテンプレートやツールを使用して自作する方法もありますが、時間や手間を省いて名刺作成を行いたい場合はネット注文がお薦めです。名刺に盛り込みたい情報を入力することで、高品質な名刺を安価かつスピーディーに作成できます。
備品の準備
異動日初日から迷わずに業務を進められるよう、備品の準備など異動者を受け入れる体制を整えておくことが重要です。
文房具などの事務用品はもちろん、社内用メールアドレスのアカウントを作成したり、ネットワークシステムにアクセスできるよう設定したりする準備を進めておきましょう。
まとめ
このコラムでは、人事異動の概要や実施する目的、異動を行う際の準備を従業員・総務担当者別に解説しました。
人事異動は就業規則に基づき、人事権を行使して実施されます。従業員の成長や会社の活性化に繋がるメリットもありますが、従業員や会社を取り巻く全ての人が異動後も気持ちよく業務を進めるための準備が必要です。
異動者は業務の整理やあいさつ回りなど、後任者や残された人がスムーズに業務を進めるよう準備を行う必要があります。また、総務担当者は従業員が異動後も迷わず業務ができるようサポートしなければなりません。
しかし、急な異動を受けた場合は従業員本人だけではなく、総務担当者も慌ててしまうでしょう。その際は、ぜひ今回ご紹介した準備すべきポイントを参考に、異動後の準備を進めてみてください。
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