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2025年問題とは?企業が今できることや国が行う対策について徹底解説

2025年問題とは?企業が今できることや国が行う対策について徹底解説

後期高齢者の増加によってもたらされる「2025年問題」は、日本経済や社会に大きな影響を与える、無視できない問題です。

現役世代にとって大きな負担となることが予想されるため、現在、国や企業では多くの対策が行われています。

このコラムでは、「2025年問題」について詳しく解説し、実際にどのような取り組みが行われているのかご紹介します。

2025年問題とは

2025年問題とは、「団塊世代」(1947~1949年生まれ)のすべての人が、75歳以上の後期高齢者となることによって引き起こされる、さまざまな問題のことです。

詳しくは後述しますが、2025年には、後期高齢者が人口の約18%を占めると予想されており、労働力不足や社会保障費の急増などが懸念されています。

2025年問題の背景

2025年問題の背景には、急速に進む少子高齢化があります。65歳以上の割合が全人口の21%以上を占める社会のことを超高齢化社会と呼びますが、日本は、2007年に超高齢化社会に突入しました。

その後も高齢化は止まらず、2025年に65歳以上の高齢者が国民の約3人に1人、75歳以上の後期高齢者が約5人に1人になると予想されています。

一方で、出生率の低下により若い世代の割合が減り続けており、労働力人口(満15歳以上の人のうち、就業者と完全失業者の合計)の減少が課題となっています。

2025年問題が社会に与える影響

2025年問題は、社会にさまざまな影響を与えると言われていますが、実際にどのような影響があるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

75歳以上の後期高齢者増加による医療費負担

まず、75歳以上の後期高齢者が増えることによる医療費負担の増加が挙げられます。後期高齢者は、他の世代よりも病気やケガのリスクが高くなり、病院を受診する機会も増えます。そのような後期高齢者の増加は、医療費負担の増大に繋がるのです。

実際、厚生労働省の資料によると、後期高齢者の医療費は1年間で一人あたり約92万円となっています。

今後も増加していく後期高齢者に対して、安定した社会保障を提供しようとすれば、社会保険料を支払う現役世代の負担がさらに増えることは避けられません。

介護費の増額

医療費だけでなく、介護にかかる費用の増大も懸念されます。介護保険制度のサービス利用料のうち、7~9割が介護給付費で賄われていますが、その財源は半分が公費(税金)、残りの半分が40歳以上の人が支払う介護保険料です。

介護給付費は、2000年度に創設されて以降増加を続けており、今後も増えることが予想されます。

深刻な人材不足

医療・介護が必要となる高齢者が増える一方で、医療・介護業界では人材不足が深刻です。

特に、介護業界は、慢性的な人材不足に悩まされています。2019年度に約211万人だったのに対し、2025年には約243万人の介護職員が必要になると言われており、人材の確保は急務です。

国も対策を打ち出していますが、必要な人材確保は追いついていません。人材不足がこれ以上深刻化すれば、施設の入所が困難になったり、介護サービスの質が低下したりすることも避けられないでしょう。

また、医療業界でも働き方改革の一環で、2024年度から医師に時間外労働上限規制が適用されるため、医療体制の維持が課題となっています。

国が行う2025年問題への対策

2025年問題を前に、既に多くの問題が表面化してきていますが、このまま少子高齢化が進めば、日本経済の減退や国力の低下が懸念されます。

これらの問題に対し、国はどのような施策を行っているのでしょうか。国の対策について、詳しくご紹介します。

介護人材の確保

介護人材の確保は、特に対策を急がなければなりません。そのため、国は介護業界への就業促進を目的として、2018年に未経験者に対する入門的研修を新設しました。また、多様な人材の活用を目指して、外国人労働者の受け入れにも力を入れています。

さらに、人材の定着率を上げるため、賃金の引上げなど労働環境や待遇を改善するための対策も積極的に行われています。介護事業所に対して、選択的週休3日制度や季節限定勤務制度などの導入を促しているのも、その一例です。

社会保障費の見直し

社会保障費とは、医療・介護・年金・福祉などの社会保障制度により、国や地方自治体が国民に対して支出する費用のことです。

財源は現役世代が支払っている社会保険料ですが、この社会保険料で、世代間の負担格差が問題となっています。この負担格差を是正するためにも、社会保険費の中で大きな割合を占める医療・介護分野にかかる費用を削減しなければなりません。

そこで、国は持続可能な社会保障を目指す「全世代型社会保障改革」の一環として、2022年10月から、一定以上の所得がある後期高齢者の医療費負担を1割から2割に変更しました。

また、「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築や薬価の改定なども行われています。

現役世代への待遇見直し

雇用の安定は、社会を維持していく上で重要です。現役世代の待遇見直しについても、国は積極的に取り組んでおり、企業に対して「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」を求めています。

具体的には、同一労働同一賃金の導入や、短時間労働者への厚生年金の加入条件緩和などが挙げられます。

それと同時に、非正規雇用労働者の正社員転換を進めることも大切です。他にも、就職氷河期世代に向けた就労支援や、最低賃金の引き上げ目標の設定などが行われています。

また、現役世代だけではなく、高齢者の雇用促進についても法整備が進められ、企業には高齢者が働き続けられる環境作りが求められています。

2025年問題は企業に影響があるのか?

2025年問題は、企業にも大きな影響を及ぼします。労働力人口の減少により、これまで以上に人材確保が難しくなることに加え、後継者不足の問題もあります。「2025年の崖」と呼ばれるITシステムの問題も見逃せません。

人材確保が難しくなる

2025年問題では、労働力人口とともに、生産年齢人口(15歳以上64歳未満の人口)の減少が大きな課題となっています。

生産年齢人口は1995年の8,716万人をピークに減少が続き、2025年には7,170万人になるとされており、今後多くの業界で人材不足が懸念されています。採用競争も激しくなることが予想され、新しい人材の確保が難しくなるでしょう。

既存体制の維持が困難になる

2025年には、「2025年の崖」と呼ばれる問題もあります。「2025年の崖」とは、2018年に経済産業省が公開した「DXレポート」という資料の中で提唱された概念です。

既存のシステムを中身や遂行プロセスを見えない状態(ブラックボックス化)で放置したことにより、サポートの終了や維持管理費が高額になるというリスクが指摘されています。また、システムの老朽化によるトラブルや、セキュリティリスクも見逃せない問題です。

これらの問題により2025年以降、最大で年間12兆円もの経済損失が生じる可能性も指摘されています。現在、経済産業省ではこれらの放置リスクに対し、システムの見直しや刷新を促しています。

このようなシステムの見直しに対応できない場合、従来の組織体制の維持は難しくなるでしょう。非効率な業務や業務負荷を軽減できない状況が続けば、企業競争力の相対的な低下にも繋がります。既存システムの見直しとともに、従業員の理解とIT知識のアップデートを進めていくことが重要です。

後継者不足と技術継承の問題

日本にある企業や法人のうちの約99%は中小企業です。しかし、その多くは経営者が高齢化している上、後継者不足にも悩まされています。

少子化の影響で親族内での事業承継が難しくなっており、従業員への承継も、将来が不透明なこともあって、なかなか後継者が見つからないというのが現状です。

このような状況が続けば、後継者不足による廃業が相次ぎ、中小企業庁の資料によると2025年までに約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われるとの試算があります。

また、建設業や製造業のような技術の継承が重要となる業界でも、高齢化は深刻です。若い世代が育たないままベテランの技術者が定年退職を迎えてしまい、仕事の質にも関わる専門技術の継承が難しくなっています。

企業が今できる対策4選

2025年問題に対応するため、企業も今できる対策を行っていく必要があります。ここでは、4つの対策をご紹介します。

長く働ける職場作り

人材不足を解消するためには、採用活動はもとより、長く働ける職場作りにも力を入れることが重要です。出産・育児だけでなく、今後は、介護と仕事の両立についても考えていかなければなりません。

経済産業省の資料によると、働きながら介護を行う「ビジネスケアラー」は、2030年には約318万人になると予想されています。

ビジネスケアラーの中には、仕事を続けたい気持ちがあるにも関わらず、介護と仕事を両立できる環境が整っていないために離職する人が多くいます。このような離職を防ぐための環境作りが急務です。

また、定年引き上げなど、高齢者が年齢に関わらず能力に応じて意欲的に働けるような仕組み作りも求められています。

それぞれのライフスタイルにあった雇用形態や、働き方(短時間勤務・在宅勤務など)の仕組みを整え、社内全体で多様な働き方に対する理解を深める必要があります。

M&Aを含む事業承継

先述のとおり、中小企業では後継者不足が深刻です。親族や従業員の中に後継者が見つからないことで、最近は、株式譲渡や事業譲渡などにより社外の第三者に引き継がせるM&A(第三者承継)が増加しています。

中小企業庁では、後継者のいない中小企業の経営者に対し、M&Aのマッチング支援や事業承継計画の策定といった支援を行っています。支援策の中には、親族内後継者の育成研修や補助金制度などもあるので、これらを活用するのもよいでしょう。

事業承継は短期間で行えるものではなく、準備期間が必要です。従業員の雇用を守るためにも、早めの対策が大切です。

生産性の向上

人材の確保が難しくなる中、少ない従業員数でも事業を維持していくためには、生産性の向上が不可欠です。

生産性向上には、業務フローの見直しが重要です。まず、一つひとつの業務を洗い出し、業務内容を可視化して、不要なプロセス・非効率なプロセスを見直すようにしましょう。

IT技術を活用したDXの推進も効果的です。最近では、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)のような、人がパソコンで行ってきた事業プロセスを自動化できる技術も開発され、生産性向上への期待が高まっています。

ベテランの技術やノウハウの継承

ベテランの技術者から若い世代への技術・ノウハウの継承がうまく進んでいないことも、中小企業にとって大きな課題の一つです。専門技術を若い世代に継承することは、仕事の質を維持する上で欠かせず、企業の競争力にも影響します。

そこで、企業には技術の継承を業務時間内に行える環境作りや、技術を途絶えさせないため、継承先に複数の人材を確保することなどが求められます。

ベテラン技術者の技術・ノウハウを、マニュアルや動画など見える形で蓄積していく仕組み作りも検討すると良いでしょう。

まとめ

ここまで、2025年問題に対する、国のさまざまな施策をご紹介してきました。しかし、この問題は国の対策だけで乗り切れるものではなく、それぞれの企業が当事者として向き合っていく必要があります。

労働力人口が減少し、人材の確保がこれまで以上に難しくなる中、魅力的な職場作りはとても大切です。

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