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建設業における熱中症対策とは?リスク回避に役立つ予防対策まとめ

建設業における熱中症対策とは?リスク回避に役立つ予防対策まとめ

毎年、建設業では熱中症による労働災害が発生しています。

熱中症は、重症化すると命にかかわることもあるため、正しい知識を身につけ、適切な予防対策をとることが重要です。

建設業では、具体的にどのような熱中症対策を講じれば良いのでしょうか。

このコラムでは、建設業で熱中症の発症しやすい理由や解決すべき課題を解説するとともに、リスク回避に役立つ熱中症対策を紹介します。

熱中症のメカニズム

熱中症とは、高温多湿な環境を主因として起こる、さまざまな症状の総称です。

人間の身体には、体温を一定に保つ体温調節機能が備わっています。体温が上がると汗をかいたり、体の表面から空気中に熱を逃がしたりすることで、自然と体温調節が行われます。

しかし、外気温が高くなり、熱がこもって体温が上昇すると、体中の水分や塩分のバランスが崩れ、調節機能はうまく働きません。血流や筋肉、神経などに影響が及び、めまいや頭痛、吐き気といった熱中症の症状があらわれます。

熱中症の症状は、軽度(Ⅰ度)・中等症(Ⅱ度)、重症(Ⅲ度)の3つの段階に分けられます。

・軽度(Ⅰ度):立ちくらみ、筋肉痛、筋肉の硬直、大量の発汗
・中等症(Ⅱ度):頭痛、倦怠感、嘔吐、集中力や判断力の低下
・重症(Ⅲ度):けいれん、意識障害、手足の運動障害、高体温

熱中症は、はじめは軽度でも急速に重症化するケースも珍しくありません。体の異変を感じた場合には、軽度でも注意深く経過観察する必要があります。

建設業と熱中症

厚生労働省が発表した「熱中症の業種別発生状況(2019〜2023年)」によると、業種別にみたの熱中症の死傷者数は、建設業が最多です。

2019〜2023年までの5年間で、建設業における熱中症の死亡者数は53人であり、全産業の約4割を占めています。この結果から、建設業は熱中症の発症リスクが高い業界であることがわかります。

建設業で熱中症が発症しやすい理由

厚生労働省が公表している「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」によると、熱中症が発症しやすい職場の条件として、「蒸し暑い環境」「⾝体負荷の⾼い作業」「体調が良くない」があります。

3つの条件のうち、建設業は環境面と作業面の2つが該当しています。

過酷な環境

建設業は空調設備のない炎天下での作業や、照り返しが強い地面近くでの作業などが多く、熱中症の発症しやすい環境です。

屋内の作業であっても、冷暖房などの空調設備が整っていないことがほとんどです。風通しが悪く、⾼温多湿になりやすい過酷な環境での作業は、熱中症の発症リスクを高める要因となります。

体への負荷が⾼い作業

建設業は体への負荷が⾼い作業が多いことも、熱中症が発症しやすい理由です。

過酷な環境下での重労働は、大量の発汗を伴います。体内の水分と塩分のバランスが崩れ、体温調節ができなくなると熱がこもり、熱中症を引き起こします。

また、長時間の作業によって体力を消耗し、疲労が蓄積することも熱中症の発症リスクを高める要因です。

建設業における熱中症対策の法令

建設業における熱中症対策は、以下の法令で定められています。

・労働安全衛⽣法
・労働安全衛⽣規則
・労働安全衛⽣法施⾏令
・作業環境測定基準

厚生労働省は、熱中症予防対策の徹底を図ることを目的とした「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施し、建設業界にも通達しています。

建設業の事業者は、これらの法令やガイドラインに沿い、熱中症対策に取り組むことが求められています。

建設業における現在の課題

建設業における現在の課題として、作業員の熱中症対策に対する知識不足が挙げられます。

知識がない場合、熱中症の症状に気づくことができません。熱中症の症状を自覚していたとしても、「大したことはない」と放っておいては、命に危険が及ぶ恐れがあります。

加えて、作業員が着用する作業服も改善すべき課題です。安全性に配慮する一方、熱がこもりやすいため、熱中症の発症リスクを高めます。

建設業界においては、これらの課題解決に向けた対策が急務です。

建設業における熱中症対策

建設現場における具体的な熱中症対策についてみていきましょう。

労働衛生教育の徹底

従業員に対して適切な熱中症対策を指導するためには、労働衛生教育の徹底が必須です。労働衛生教育とは、労働者や作業従事者の安全や健康を守るための教育です。

熱中症対策における労働衛生教育では、熱中症の症状や予防方法、緊急時の救急処置、熱中症の事例などを教育します。

定期的に研修を実施するほか、建設現場に熱中症を注意喚起するポスターを掲示することも有効です。

作業環境の管理

建設業の作業環境は、熱中症の発症に大きな影響を与えるため、徹底した管理および整備が必要です。

暑さ指数(WBGT値)・気象予報の確認

作業環境を整えるためには、毎日の暑さ指数(WBGT値)と気象予報の確認が必須です。

暑さ指数(WBGT値)とは、熱中症を予防することを目標とした指標です。数値が高ければ高いほど、熱中症の発症リスクが高いと判断します。

予想最高気温や湿度など気象予報も参考にしながら、暑さ指数(WBGT値)が基準値を超える可能性がある場合には、適切な予防対策を講じる必要があります。

作業環境と作業時間の見直し

熱中症の発症リスクが高まる6月下旬から8月は、作業環境や作業時間の見直しも必要です。

日差しが強く気温が高い日は、テントで日陰を作ったり、朝や夕方など⽇差しが強くない時間帯に打ち水をしたりすると熱中症の発症リスクを抑えられます。

高温多湿となる現場では、出勤時間の前倒しや作業時間の短縮も効果的な熱中症予防対策です。状況によっては、作業を中止する判断も必要です。

休憩時間と場所の整備

暑熱環境下での作業においては、休憩時間を十分に確保することも重要です。1時間ごとに休憩を設ける、15分休憩を30分休憩に延長するなど、作業員がしっかりと休める機会を増やします。

休憩場所は、冷房の効いた室内や日陰など、涼しい場所に設けます。自動販売機や冷水機、冷蔵庫、シャワー室など適度に体を冷やせる設備も用意すると良いでしょう。

現場から休憩場所まで遠いと移動に時間がかかってしまい、十分な休憩がとれません。現場の近くに休憩場所を確保できない場合は、休憩用の車両を別途用意することも検討しましょう。

作業服の見直し

建設現場では、安全対策のために厚手の作業着やマスクなどを身につける必要があります。身の安全は守れるものの、作業服の素材やデザインによっては熱中症のリスクが高まる恐れもあります。

熱中症を予防するためには、吸湿性や速乾性が高い素材の作業着を選びましょう。接触冷感機能のあるインナーを着用するのも効果的です。

こまめな水分と塩分の補給

熱中症を引き起こさないためには、水分と塩分のこまめな補給が欠かせません。

建設現場では、作業員に対してこまめな水分補給を促しましょう。水分補給と同時に、塩分の摂取も行います。経口補水液や塩分を多く含んだ飴やタブレットなどを作業員に配布したり、休憩室に常備したりすると良いでしょう。

体調面の管理

建設業における熱中症対策として、日頃から各作業員が健康管理に努めることも重要です。

暑熱順化

暑熱順化(しょねつじゅんか)とは、無理のない範囲で汗をかき、体を暑さに慣れさせることです。

個人差はありますが、暑熱順化は一般的に数日から2週間程度かかるとされています。本格的に暑くなる前に、暑熱順化のための取り組みをはじめると、熱中症になりにくくなります。

暑熱順化は計画的に取り組むことが大切です。屋外での作業時間を少しずつ延長したり、暑さに慣れるまでは⼗分に休憩をとったりなど、7日以上かけて徐々に⾝体を慣らしていきましょう。

従業員の健康状態の確認

作業開始前に従業員の健康状態の確認を行うことで、体調不良者の早期発見ができ、熱中症の発症を未然に防げます。

毎日の健康状態を把握するためには、健康管理シートや健康観察アプリなどの活用がお薦めです。自分の体調を把握しやすく、熱中症対策の強化に役立ちます。

作業中の見回り

作業開始前は健康状態が良好だったとしても、作業途中や作業終了後に熱中症を発症するかもしれません。

管理者が定期的に作業巡視を行い、顔色を目視で確認したり声掛けをしたりなど、熱中症を疑わせる兆候がないかを確認しましょう。

異常を感じた場合には、休憩場所での休憩を促し、保冷剤や冷却スプレーを使って体を冷却するといった適切な対処をすることで熱中症の発症や重症化を防止できます。

熱中症対策グッズの活用

建設業における熱中症対策には、熱中症対策グッズを積極的に活用することも有効です。

作業環境を管理するためには、暑さ指数(WBTG値)を計測できる熱中症指数計の活用がお薦めです。建設現場の暑熱環境を随時確認できるため、熱中症の発症を未然に防げます。

体内の熱を外に逃せる小型のファンが付いた空調服や、保冷材を入れるポケットが付いたクールベストなどを作業服として取り入れることも熱中症対策に効果があります。

水に濡らすだけで冷たくなる冷却タオルや、服の上から噴射してヒンヤリ感が得られる冷却スプレーを休憩室に用意しておくのも良いでしょう。

暑熱順化や健康状態の確認も行いながら、熱中症対策グッズも併用することで、より効果的な熱中症予防が行えます。

もしも建設現場で熱中症が起こったら

建設現場で熱中症が起こった場合、命を守る⾏動をとらなくてはなりません。

熱中症の応急処置として、まず休憩所や日陰などの涼しい場所に移動させます。衣類を脱がせて体内の熱を放出し、⽔をかけて体を冷却します。意識がある場合は、水分と塩分を同時に補える経口補水液やスポーツ飲料などを補給させましょう。

意識がない、返事がおかしい、自意識はあっても水分を自力で摂取できない場合は重症です。迷うことなく救急車を要請しましょう。水分を自分で摂取できるものの、症状が改善しない場合も、医療機関を受診すべきです。

症状が軽い場合も決して軽視せず、早急かつ適切な応急処置を行いましょう。

まとめ

建設業は、屋外での作業や重労働が多く、熱中症が発症しやすい労働環境です。

しかし、熱中症の予防法を知っていれば発症を防ぐことができ、適切な対処法を知っていれば命を守ることもできます。

熱中症の発症リスクが高い建設業では、法令やガイドラインに沿った対策を行うとともに、熱中症対策グッズも導入し、熱中症の発症予防に努めましょう。

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