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企業で働く従業員にとって、人事異動は大きな関心事ではないでしょうか。人事異動の内容によって、その後のキャリア形成に大きく影響を与えます。企業の人事担当者は、従業員や企業にとってより良い人事となるよう気を配る必要があるでしょう。
このコラムでは、人事異動の基本や人事異動を行う目的、実施時のポイントについて解説します。
人事異動とは
人事異動とは、企業が人事権を行使し、従業員の職位や勤務地、勤務条件などを変更することを指します。配置転換と同じ意味ですが、人事異動の場合は採用や離職を含める場合もあります。大きく分けて、企業内で行われるものと企業間で行われるものの2種類がありますが、以下にその種類をご紹介します。
企業内で行われる人事
・「昇格」「降格」とは、従業員の貢献度に応じて、役職や職位を変更することです。昇格は職位が上がり、降格は職位が下がることを指します。
・「部署異動」とは、所属部署を変更することです。本人の希望によるものや、本人の特性に合わせ会社が命じるものがあります。
・「職種変更」とは、営業職からマーケティング職など、職種を超える異動のことです。
・「転勤」とは、勤務地を変更することです。転居を伴う異動となることがほとんどですが、同じ県内での異動など転居を伴わない場合もあります。
企業間で行われる人事
・「出向」とは、グループ企業や関連企業などに異動することです。出向前の企業と雇用関係を保ったまま、グループ会社に出向いて働くことです。
・「転籍」とは、グループ企業や関連企業など異動先の企業と雇用契約を結んだ上で勤務することです。
人事異動の時期はいつ?
人事異動の時期は、異動する従業員にとって重要なポイントです。内示を行うタイミングに気を付け、できるだけ従業員がスムーズに異動できるよう配慮することが大切です。
人事異動が多い時期とは
人事異動の時期は企業や業種・業界によってそれぞれ異なりますが、4月と10月が一般的です。これは、多くの日本企業の決算が3月や9月に集中しているためです。決算期末に立てる次年度の経営方針に基づき、人事を決定するので翌月の人事異動が多くなります。
とはいえ、アパレル業は繁忙期であるセールが終わった後の2月や8月に人事異動を行うことが多く、鉄道業界は新年度が落ち着いた7月が多いなど、業種・業界によって様々です。
人事異動の周期について
独立行政法人労働政策研究・研修機構の「企業における転勤の実態に関する調査」では、3年から5年の周期が最も多く、その中でも3年が1番多い結果となっています。
また、ジョブローテーションを行っている企業の場合、若手教育の一環として、1ヶ月・3ヶ月・1年など短い周期で多くの経験が積めるよう頻繁に人事異動を行うこともあります。
従業員への内示はいつ行うのが適切か
企業が人事を決定した後、従業員への内示は速やかに行いたいものです。転居を伴わない異動の場合は、1週間から1ヶ月前に内示を出すと良いでしょう。一方で、転居を伴う異動の場合は、転居先の物件を探したり、引っ越し作業の時間を確保したりする必要があるため、1ヶ月以上前には内示を出しましょう。
なお、家族と一緒に転居する場合は3ヶ月から6ヶ月前に内示を出し、子どもの転校手続きなどが滞りなく行えるよう充分に時間を取ることが大切です。
人事異動を行う目的
ほとんどの企業が人事異動を行っていますが、その目的とは何でしょうか。大きく4つご紹介します。
組織の生産性を高める
人事異動を行うことで、組織の生産性を高めます。長期間同じメンバーでいると、マンネリ化に繋がったり、意欲や生産性が低くなったりなど、トラブルが起きてしまうことがあります。また従業員においても、同じ部署に長くいると、新しい知識やスキルを得るチャンスが得られません。
新しい人材を投入することで、組織は異なる考え方やスキルを受け入れ、新たな組織として生まれ変わり、成長できます。
人材育成
人事異動は、人材育成にも繋がります。日本ではジェネラリストを育てる方針の企業が多く、管理職になるまでに様々な部署や職種を経験します。従業員が様々な知見やスキルを得ることは、企業にとって大きな利益となります。
また、同じ部署内での異動であっても、担当するクライアントが変わるだけでこれまでとは違った知見を得ることができるでしょう。
部署のリソース不足を補う
欠員が出た時や、新規事業立ち上げの際に人事異動が行われることもあります。新たに人材を採用するよりも、人事異動の方がかかるコストが少なく済みます。また、新たに採用するよりも組織の雰囲気に馴染みやすいことも、人事異動によってリソース不足を補う理由の1つです。
不正防止
人事異動の目的は、不正を防ぐためでもあります。長く同じ部署で働くことは、従業員とクライアントとの間に癒着を生みやすくなります。長く所属している従業員が不正の窓口となり、クライアントから金銭授受などの不正行為を働いたり、業務に慣れてしまった従業員が商品の検査を怠ってしまったりすることがあります。
そのため、企業は定期的に人事異動を行い、組織内の人間関係をリセットする必要があります。
人事異動を行うメリット
次に、人事異動を行うメリットを解説します。メリットをよく理解し、企業と従業員の双方にとって前向きな異動となるよう心がけましょう。
従業員の成長・モチベーション向上に繋がる
異なる職種や部署で働くには、新たなスキルが必要です。長く同じ部署で働くとマンネリ化しがちですが、新たな環境に身を置き、学びを促されることで、仕事に対するモチベーションの向上に繋がります。
多くの経験を通じて様々なスキルを身につけ、多様な知見を持った従業員は、企業にとって大きな利益をもたらす人材となるでしょう。
離職防止に繋がる
人事異動によってモチベーションが向上すると、離職防止にも繋がります。仕事へのモチベーションが低下した状態だと、転職を考える従業員もいるでしょう。しかし、社内にキャリアアップのチャンスがあると理解することで、人事異動を前向きに捉え、積極的にチャレンジできます。
業務効率化に繋がる
適材適所を意識した人事異動を行うことで、従業員の特性を最大限に発揮でき、業務効率化に繋がります。苦手な業務を続けるとモチベーションが下がり、結果として業務効率が悪くなり生産性が下がります。
適材適所で配置された従業員が増えると、従業員同士が切磋琢磨し、組織の活性化が図れ、業績アップを期待できるでしょう。
企業が取り組むべき業務効率化・生産性向上についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
業務効率化と生産性向上の違いとは?企業が取り組むべきポイントや注意点について解説
人事異動で気を付けるべきポイント
多くのメリットがある人事異動ですが、成功させるために気を付けるべきポイントがあります。人事異動後のトラブルを防ぐためにも、以下のポイントをぜひ参考にしてみてください。
社内の状況や課題を把握する
社内の人間関係を把握し、効果的な人事異動を行います。ハラスメントによるトラブルなど、別の組織に配置すべき関係性を把握しておくことは、人事異動後のトラブルを未然に防ぎます。
また、人手不足など各部署の課題を確認しておくことも大切です。どの部署でどういった人材を必要としているのかを事前にリサーチし、異動する従業員と配属先の部署の双方にとってミスマッチのないように行いましょう。
従業員の状況や希望を把握する
従業員の状況や希望を把握することはとても重要です。近年、個人が好きな働き方を選択できるため、転職は珍しいことではありません。希望職種や入社時のキャリア志向などを把握しないまま人事異動を行うと、優秀な人材が離れてしまう可能性があります。
また、健康状態や家庭の状況など、個人的な事情を把握して異動対象者であるかを見定めましょう。人事異動後に就業が困難になってしまうことのないよう、予めチェックする必要があります。
法律違反になっていないか注意する
企業が注意しておきたい法律には、労働基準法、労働契約法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法などがあります。例えば、入社時の労働契約とは異なる勤務地や職種への異動は、労働契約法によって禁止と定められているため、労働者の同意無しには実施できません。
また男女雇用機会均等法では、企業は従業員の性別による差別や、婚姻、妊娠・出産による不利益な人事異動を禁止しています。人事を決定する際はこれらの法律に抵触していないかよく確認する必要があります。
内示の時期や手順に注意する
異動は、従業員にとって負荷のかかることです。特に転居を伴う異動の場合は、十分に引っ越しの準備時間を確保できるよう早めに内示を出すようにしましょう。内示の時期は業務の繁忙期を避け、引継ぎを積極的にフォローし、異動対象者だけに任せることのないようにしましょう。
その他に、情報が残ってしまうメールや書面で内示を出すのではなく、口頭で伝えるなど手順を確認しておくことが大切です。内示を出した際は、口外禁止ということも併せて伝えておきましょう。
また、異動の際に必要な備品はオフィス用品通販サイトなどで予め準備しておくとスムーズです。
異動の準備についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
異動を行う際の準備とは?人事異動の種類や内示後にやるべきことについて解説
拒否される可能性を考慮する
企業には人事権があるため、基本的に従業員は人事異動を拒否することはできません。しかし、異動をネガティブに捉え、モチベーションが下がって離職に繋がるリスクについても企業側は理解しておく必要があります。
内示を出す際は、配属先で何を求められているのか、どういったスキルを活かせるのかなど、異動の理由も踏まえて丁寧に説明すると、従業員は異動を前向きに捉えることができるでしょう。
人事異動を成功させるためのポイント
では、人事異動を成功させるためにはどうしたら良いのでしょうか。4つのポイントを紹介します。
経営方針や経営戦略を考慮する
人事異動は、経営方針や経営戦略に基づいて行うことがポイントです。異動の必要性や目的がはっきりしないと、従業員のモチベーションを下げてしまいます。従業員と目的を共有した上で人事異動を行うことで組織が活性化され、結果的に企業に利益をもたらすでしょう。
適材適所を意識する
適材適所を意識した人員配置は、配属後のミスマッチをなくし、モチベーションの低下を防ぎます。どの部署にどのような人材が必要なのか、どんな実績やスキルを持った従業員がいるのかを事前に把握しておきましょう。
従業員の特性に合った部署に配属することで、その従業員のパフォーマンスを最大限に引き出すことができます。
従業員の意見や希望を聞く
事前に面談をするなど、従業員の意見や希望を聞いておくことも有効です。家庭の事情や病気などで、転居を伴う異動が難しい従業員もいるでしょう。従業員の合意を得られるような条件を前もって準備しておくことで、人事異動をスムーズに進めることができます。
十分な説明を行う
異動の事実のみを伝えるのではなく、十分に説明を行いましょう。何故このタイミングで異動が行われるのか、組織の目標、配属先での役割や期待されていることなどを具体的に説明します。
期待されていることが従業員に伝わると、異動を前向きに捉えることができ、モチベーションも向上します。
まとめ
人事異動は、新しい環境へのプレッシャーやストレスも多いため、異動する従業員にとって大きな転機となります。従業員が新しい配属先で最大限の力を発揮し、組織力の向上に貢献できるよう、異動が決まったらスムーズに手続きを進めたいものです。
異動後の部署で必要な備品はオフィス用品通販サイトのスマートオフィスで計画的に準備しておくのがお薦めです。マイカタログやカート一時保存機能を利用して、異動セットなどを予め準備しておくと、忙しい引継ぎ業務が続いても慌てることはありません。最短で翌日発送も可能なので、ぜひお気軽にご相談ください。