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思いがけず大切な衣類や机に、油性マジックで色を付けてしまい困った経験はありませんか。仕事でも家庭でも重宝する油性マジックですが、誤って書いてしまった場合の落とし方を知っておくと、いざという時に冷静に対処できます。
このコラムでは付着した素材別の落とし方を中心に、油性マジックの特性や落とす際の注意点までを徹底解説していきます。
油性マジックはなぜ落ちにくいのか
油性マジックの最大の特長である「落ちにくさ」。メーカーが落ちにくさを追求して開発した商品なので、当然汚れを簡単に落とすことはできません。ではなぜ落としにくいのか、そのメカニズムを3つの点からご紹介しましょう。
「有機溶剤」が主成分のため
油性マジックで書いた文字が瞬時に乾き、滲(にじ)まずに書ける理由の一つとして「有機溶剤」が挙げられます。揮発性と耐水性に優れた油性マジックから、有機溶剤特有の匂いを感じた経験があるのではないでしょうか。
この有機溶剤は油が主成分のため、水との相性がよくありません。その油分に着色剤が溶けているため水洗いでは色が落ちないのです。
「染料」が使われているため
多くの油性マジックの着色剤として使用されている「染料」。発色のバリエーションが豊かで素材の質感を活かす特徴を持ちます。しかし素材に色を乗せる「顔料」に比べて、素材に色を染み込ませる「染料」は、紙や木材などの染み込みやすい素材に色が移った場合、落とすことが非常に困難な要因となります。
「樹脂と定着材」が含まれているため
インクの成分をつなぎあわせて耐久性を高める「樹脂」と、油分と密着しにくいプラスチック素材からインクが剥がれないように作用する「定着剤」。これらも油性マジックを落としにくい理由の一つです。
これらの「落ちにくい成分」が複合的に合わさることで油性マジックは落としにくくなるため、このメカニズムを知っていると油性マジックを落とす際の手がかりになります。
油性マジックを落としやすい素材・落としにくい素材
前述の通り、多くの落ちない要因を持つ油性マジックですが、実は付着した素材によって落ち方が大きく異なります。ここでは、汚れを落とす前に油性マジックの落としやすさを素材別に比較して見ていきましょう。
落としやすい素材
落としやすい素材は以下のとおりです。
皮膚・凹凸のないガラス面・金属(アルミ以外)・釉薬(ゆうやく)のかかった陶器・ホワイトボード
表面がつるっとして染料が染みにくい素材は落としやすい部類に入ります。迅速かつ適切に対処すればきれいに落とせる可能性が高い素材ですが、アルミなどは長時間経ってしまうと染まって落ちない場合があります。皮膚についた汚れは肌荒れを起こさないよう、正しい方法で落としましょう。
落としにくい素材
落としにくい素材は以下のとおりです。
プラスチック・布・ビニール・壁紙・塗装された木材・合成皮革・アルミ・ゴム
表面にざらつきや凹凸がある素材と溶剤に耐性がない素材は落ちにくい部類に入ります。これらは落としても跡が残ったり、素材自体を傷めてしまったりする可能性があるので、正しい知識で対処しましょう。
落とせない素材
落とせない素材は以下のとおりです。
紙・石・レンガ・ブロック・本革・無垢材・軟質塩化ビニール
これらは油性マジックがついてしまったら残念ながら落とせないと考えましょう。無垢材は表面のインクが落ちても中までは落とせません。また、本革も汚れを落とす作業の中で皮革の色落ちや素材の劣化があった場合元に戻せないため、落とせない部類となります。
以上を踏まえた上で、次はいよいよ汚れがついてしまった場合の素材別の落とし方です。
布製品についた油性マジック 基本の落とし方
仕事中、シャツや仕事着に意図せずマジックを付けてしまいショックを受けたことはありませんか。布に付着した場合の対処方法はいくつかあるので、順に解説していきます。
無水エタノール・除光液・クレンジングオイルを使う場合
販売されているエタノールの中でも特に純度の高い「無水エタノール」は、アルコールの一種で油が水に溶けやすいよう作用する性質を持ちます。
また、アセトンを含む「除光液」も、油や樹脂を溶かす性質によりマジック汚れを落とすことができます。ただし布の種類(アセテートやアクリルなど)によっては使えない場合や布自体が傷む可能性があるため、素材の確認が必要です。
皮脂や化粧品など油と好相性のクレンジングオイルも有効です。手元にあるものでまずは試してみましょう。
用意するもの
・無水エタノール(または除光液・クレンジングオイル)・汚れてもよい布
・歯ブラシ・ビニール袋・ゴム手袋
落とし方の手順
1.机が汚れないようビニール袋を敷き、手が荒れないようにゴム手袋をつける
2.ビニール袋の上に汚れてもよい布を敷き、汚れの付いた布をのせる
3.エタノール(または除光液・クレンジングオイル)を汚れた場所へ塗布し、下の布へ汚れを移すように歯ブラシで小刻みにトントンと叩く
4.一度ぬるま湯で流し、汚れの落ち具合を確認しながら1~3を繰り返す
5.最後に洗濯機で洗って完了
特に除光液を使う場合は、部屋の換気を忘れずに行いましょう。
酸素系漂白剤を使う場合
次に紹介する酸素系漂白剤には、布自体の色柄を落とさずに油汚れや皮脂汚れを落とす働きがあります。酸素系漂白剤の効果は温水を使うことで上がります。ただし、粉末タイプはシルクやウールなどデリケートな素材では使用できないため注意してください。
用意するもの
酸素系漂白剤・50℃前後のお湯、バケツ、ゴム手袋
落とし方の手順
1.ゴム手袋を付け、お湯を張ったバケツに酸素系漂白剤を表示通り入れて混ぜる
2.油性マジックがついた布を入れて、1時間〜数時間つけ置く
3.布を取り出し軽くゆすいでから、洗濯機で洗って完了
その他の落とし方
上記以外に、布についたマーカーの落とし方として「塗布放置洗浄」があります。高濃度の衣類用液体洗剤を汚れに直接塗布して放置し、インクが滲んできたら洗濯機で洗います。放置時間は数時間から1日程度が目安です。先に紹介した方法の総仕上げとして併用も可能です。
また、シルクやウールなどのデリケートな素材についてしまった場合は、クリーニング店へ持ち込みましょう。中途半端に自力で処理してしまった後ではプロでも落とせない可能性があるため、お気に入りの服などは自己判断せずクリーニング店への相談をお薦めします。
Check Point !
布についた汚れを落とす方法はいくつかあるので、まずは身近にあるものを使って対処してみましょう。インクは乾燥すると落としにくくなるためなるべく早く処置することが大切です。油分は冷たい水よりも湯の方が溶けやすいですが、熱湯は布を傷めてしまいます。汚れを落とす際はぬるま湯を使うことがポイントです。
布以外についた油性マジック 基本の落とし方
ここでは、布以外についた油性マジックを落とす方法を順に見ていきましょう。
皮膚
皮膚に付いた油性マジックは、普段通りの生活の中で手や身体を洗っていれば、時間の経過とともに落ちていきます。どうしても早く落としたい場合は、油分や乳化剤を含んだクレンジングオイルや日焼け止めクリーム、口紅などを使ってみましょう。これらは肌に付けることを想定した商品のため肌荒れを起こしにくい点で安心です。
用意するもの
・クレンジングオイル(または日焼け止め、口紅)・ティッシュ
落とし方の手順
1.クレンジングオイル(または日焼け止め、口紅)を汚れの上に塗る
2.円を描くように揉みこむ
3.ティッシュでふきとり、しっかりと洗い流す
Check Point !
その他、手指消毒用ジェルを同様に塗り込み落とす方法もあります。まずは自分の肌に負担の少ない商品から試してみましょう。落とした後は、皮膚が乾燥しないよう保湿することも大切なポイントです。
陶器やガラス
表面がつるっとした陶器やガラスは、マジックの成分が染み込みにくいため比較的簡単に汚れを落とすことができます。まずは消しゴムでこすってみて、落とせない部分はエタノールを染み込ませた布でこすってみましょう。
すりガラスなど表面に細かい凹凸がある場合は、エタノールをスプレーで塗布し、ある程度油性マジックが浮いてきたら布で拭き取ってみましょう。
用意するもの
プラスチックの消しゴム・無水エタノール(または除光液)・汚れてもよい布
落とし方の手順
1.(インクが乾く前に)汚れた部分に消しゴムをかける
2.エタノール(または除光液)をスプレーするか、布に染み込ませて拭く
3.汚れの落ち具合を確認しながら2を繰り返す
プラスチック
プラスチックも、陶器やガラスと同じようにまずは消しゴムで試したのち、取れない場合はエタノールや除光液で汚れを落とします。陶器やガラスの「用意するもの」と「落とし方の手順」を参考にアプローチしてみましょう。
ただし、プラスチックはそれ自身や塗装部分の耐溶剤性(溶剤からの影響を受けにくい性質)が低い場合、表面が溶け出したり、色やつやに変化が起こったりする可能性があるため注意が必要です。また表面に傷がある場合は、その部分が染まってしまい取れない場合もあります。
Check Point !
陶器・ガラス・プラスチック、いずれの場合も溶剤の影響が出ないか、目立たない場所でまずは試してから汚れ落としに挑戦してみましょう。まずは汚れが付いたら、すぐに消しゴムで落とす手順が傷をつける心配がなく安心ですので覚えておきましょう。
その他の素材
最後に、その他の気になる素材の落とし方を見ていきましょう。
木製の家具やフローリング
コーティングを施した木製家具やフローリングが汚れた場合は、柑橘類の皮の外側を汚れた部分に擦りつけ、次に内側の白い部分で拭き取ります。柑橘類の皮に含まれる「リモネン」が油を溶かす作用を発揮します。
歯磨き粉や消しゴム、クレンジングオイル、線香の灰などを擦り付けてこする方法でも汚れを薄くできます。いずれの場合も、水拭きと乾拭きで最後に成分を取り除いておきましょう。エタノールや除光液は、木材を変色させてしまう場合があります。
壁紙
壁紙に油性マジックがついてしまったら、すぐにプラスチック消しゴムでこすってみましょう。コーティングされた壁紙の場合、エタノールを染み込ませたメラミンスポンジで優しく擦るだけでも、汚れが薄くなる可能性があります。強く擦ると壁紙を傷つけ、剥がれなどの原因になるため注意して行いましょう。
ホワイトボード
ホワイトボードに油性マジックで誤って書いてしまった場合は、油性マジックで書いた部分にホワイトボードマーカーを上塗りすると、クリーナーで消すことができます。落としたい範囲が広い場合には、無水エタノールや除光液を含ませた布で拭いてみましょう。
ビニール製品
落としにくい素材に分類されるビニール製品の汚れは、無水エタノールや除光液を使いますが、表面のプリントが消えたり、ビニール自体が溶けたりすることもあります。ハンドクリームやプラスチック消しゴムで擦る方法もありますが、いずれの場合もビニールへのダメージを考慮し、事前に試してから行いましょう。
革製品
革製品は合皮か本革かによって、扱いが異なります。合皮の場合は、まず始めにエタノールを付けた布で拭きます。汚れが取れない場合はクリームタイプのクレンザーを柔らかい布に塗布し優しくこすります。乾燥後も汚れがあれば、綿棒に塩素系漂白剤をつけてなぞり、最後に水拭きをして完了です。
前述の通り、本革は汚れ落としの工程で革自体が色落ちするリスクがあるため、気になる場合は革専門のクリーニング店に相談しましょう。
まとめ
今回は、油性マジックが落としにくい理由から素材別の落とし方まで詳しくご紹介してきました。どこにでも書けて消えにくいため非常に便利な油性マジック。落とし方も合わせて知っておくことで、より有効活用できるでしょう。
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