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近年、労働者の事情に応じた働き方が選択できるよう、政府によって働き方改革が頻繁に叫ばれるようになりました。
なんとなく内容は知っているけれど、「何を行なえば働き方改革を成功できるか」「自社で導入する際は、どのように始めれば良いか」と疑問に思う方も少なくないでしょう。
本コラムでは、働き方改革の法律に触れた上で、成功させる上で押さえておきたいポイント、企業の取り組み事例をご紹介します。
働き方改革とは
働き方改革とは、労働者が個々の事情に応じて、さまざまな働き方を選択できる社会を実現するために政府が掲げた取り組みです。
「長時間労働の是正」「多様で柔軟な働き方の実現」「雇用形態にかかわらない公正な待遇」といった、公正で多様な社会の実現に向けた取り組み全体を指します。
総務省の調査によると、2050年度には生産年齢人口が5,275万人(2021年から29.2%減)に減少するとされています。日本の労働力不足や需要減少による経済規模の縮小は、深刻な社会的・経済的課題であり、それに対する一手が働き方改革といえるでしょう。
そのため、働き方改革によって一人ひとりの労働生産性を向上させ、労働力を確保することが急務です。
働き方改革関連法とは
働き方改革は、「働き方改革関連法」として2019年4月1日から関連法が順次施行されている法改正を含めた包括的な取り組みを指します。働き方改革関連法の正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」です。
通常、法律の改正は「雇用対策法」「労働基準法」など、一つの法律単位で見直すことが一般的です。しかし、働き方改革を実現するためには関連法が多かったことから、働く事に関わる8つの関連法を一度にまとめて審議できるようにしたのが働き方改革関連法です。
働き方改革の3本柱
2019年に施行された働き方改革関連法では、「長時間労働の是正」「多様で柔軟な働き方の実現」「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」を3つの柱として掲げています。
3つの柱で掲げている項目の目的や具体的な内容について、見ていきましょう。
長時間労働の是正
働き方改革関連法では、残業時間に上限を設け、特別な事情がなければ上限を超えた労働ができないよう定めています。長時間労働を無くし、10日以上の有給休暇が付与される労働者については、年5日に有給を取得させるなど、働きやすい社会を目指しています。
<時間外労働の上限>
・年720時間以内
・時間外・休日労働の合計は月100時間未満
・時間外・休日労働の合計は各月平均が全て80時間/月以内
上記は特別な事情があっても超過はできません。
多様で柔軟な働き方の実現
フレックスタイム制の拡充や高度プロフェッショナル制度の創設など、より柔軟な働き方の実現に向けた制度も整備されています。
例えば、フレックスタイム制は、時短勤務希望者などの働く環境に制限がある人も、柔軟な働き方を実現することが可能となるため、企業・労働者双方にとってメリットのある働き方です。
このフレックスタイム制の精算期間の上限が労働基準法の改正により1ヵ月から3ヵ月に延長され、月をまたいだ清算が可能となりました。そのため、労働者はより働きやすくなったといえるでしょう。
企業側にもメリットがあります。これまでは月をまたいだ清算ができなかったため、1カ月単位で残業時間の支払いが発生していましたが、改正後は清算期間が3ヵ月となり繁閑に応じた労働力の調整が可能となりました。あわせて、精算残業代の支払いを抑制する効果も期待できます。
雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
同一企業内における正社員と非正規社員で、不合理な待遇の差をなくすことを目的とした法律の改正です。例えば、非正規社員が正社員と同等の業務内容や業務量を行っているにも関わらず、賃上げされないというケースが該当します。
基本給や賞与といった待遇面をはじめ、福利厚生など、同一賃金・同一労働の実現を目指しています。
働き方改革による企業側のメリット
働き方改革は従業員はもちろん、企業側にも取り組むことによるメリットがあります。
本項で取り組むことによる具体的なメリットを見ていきましょう。
生産性の向上
従業員が自分のライフステージや環境に応じた柔軟な働き方が選択できることは、労働生産性の向上に繋がります。限られた時間の中で、メリハリをつけて効率性を意識できるようになるためです。
例えば、介護経験者を対象にした内閣府の「仕事と介護の両立に関するデータ」によると、退職理由の約半数が「当時の勤務先では労働時間が長かったため」と回答しているデータもあります。長時間労働で離職者を出し、そもそもの労働力を失うことがないこともメリットといえるでしょう。
魅力ある職場づくりで人材確保
働き方改革に取り組む企業だということは、企業イメージを向上させるだけでなく、より働きやすい会社だという点を求職者へアピールが可能です。
このような企業イメージの向上は、人材難に苦しむ昨今の日本企業においては非常に重要なポイントでしょう。人材の定着にも繋がるため、結果的に労働力の確保や利益向上へと繋がります。
残業時間の削減によるコスト抑制
働き方改革によって残業時間を削減できれば、人件費や電気代などのコスト抑制が可能です。
これまでの日本では、長時間労働が美徳とされてきたため、過労死やオーバーワークによるメンタルヘルスの問題も課題でした。
このような課題を解消することで、結果として健康で生き生きと働く社員を確保し、コストを抑制しながら利益を上げることができるでしょう。
企業の働き方改革具体例11選
働き方改革を推し進めるためには、経営層が提唱するだけでは実現できません。現場で管理するマネージャーをはじめ、実際に業務を遂行する従業員の理解や意識の変化が必要です。
それでは、どのような制度を導入すれば良いのでしょうか。各社の取り組み例について、具体的な内容を11個に絞ってご紹介いたします。
短時間勤務制度の導入
短時間勤務制度を導入することによって、子育てや介護で長時間労働ができない人が働き続ける環境を提供できます。
1日の所定労働時間を原則6時間とする、週・月単位での労働日数を短縮するなど、働きやすい制度を検討しましょう。
育児休暇の取得促進
女性だけでなく、男性も育児休暇を取得できるようにすることで、やむを得ない事情による人材の流出を防止できます。
このようなライフイベントの変化によって働くことを諦める人は少なくありません。そのため、結果として人材確保や離職率の低下にも繋がります。
在宅勤務の推進
在宅勤務の推進は、「通勤の負担軽減」や「時間の有効活用」ができるため、生産性の向上が期待できます。満員電車に揺られて出社するというストレスからも解放されるため、在宅勤務を希望する労働者も増加傾向にあります。
接客業や現場作業といった出社が必須の場合でない限り、検討されるとよいでしょう。
フレックスタイム制の導入
フレックスタイム制とは、総労働時間を設定し、その範囲内において業務の開始時間や終了時間を設定できる制度です。必ず勤務していなければならないコアタイムを設定する場合もあれば、コアタイム無しのスーパーフレックスタイム制という形態もあります。
体調や状況に応じて、緩急をつけて働くことができるため、モチベーションアップにも繋がります。
多様な働き方に対応したオフィス環境の改善
働き方改革を導入する際、従業員の多様な働き方に応じてオフィス環境を見直すのも有効な手段です。
例えば、在宅勤務制度の導入を検討するのであれば、出社人数が減るため席を固定しないフリーアドレス制を採用すると良いでしょう。部署を超えた社内コミュニケーションの活性化が期待できます。
勤務間インターバル制度の導入
勤務間インターバル制度とは、勤務終了から翌日の出社までに一定の休息時間を確保する仕組みです。プライベートや睡眠といった時間を守ることで、健康維持やワーク・ライフ・バランスの向上が期待できます。
企業の取り組みについては「努力義務」とされていますが、厚生労働省が案内している「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」の交付申請を行うと、成果目標の達成状況に応じて助成金が支給されます。その場合、事業主は交付決定日から政府がとり決めた期日までに実施する必要があります。
週休3日制の導入
1週間に3日休みが取れる週休3日制や、希望に応じて週3日休むことができる選択的週休3日制も検討したい項目の一つです。
労働者の働き方を柔軟にするだけでなく、介護や治療、育児といったライフイベントと仕事との両立が期待できます。また、学び直しや地域貢献といった労働者のワーク・ライフ・バランスを促進する施策としても有効でしょう。
ワークフローシステムの導入
ワークフローシステムとは、社内で行われる各種申請や稟議などの手続き業務を電子化するシステムです。「電子決裁システム」とも呼ばれており、時間や場所に縛られることなく業務手続きを行うことで、業務の効率化へと繋げることができます。
ICT利活用の推進
ICT利活用の推進も、情報共有の円滑化において有効な手段です。
例えば、SlackやLINE WORKSなどのビジネスチャットツールを活用すれば、在宅勤務下でも組織のコミュニケーションを円滑化できます。また、クラウドを利用して情報共有が行えることで、効率的な作業ができるでしょう。
RPAの導入による業務効率化
RPAとは、ロボティックプロセスオートメーションの略で、パソコンで行っていた作業を自動化できるソフトウェアロボット技術です。
作業スピードが速い上に、土日祝や夜間といった人が対応できない時間帯にも処理が可能となります。活用すれば、大量作業の自動化による効率アップが期待できます。
人事評価制度の見直し
社員一人ひとりがさらに能力を高めるために指標として、能力開発目標を設定することも働き方改革において有効です。
能力や専門性の向上による組織への貢献度アップや、働く意欲の向上やモチベーションアップによる組織へのエンゲージメントアップといった効果が期待できます。結果として、対応領域の幅を拡げることも可能でしょう。
働き方改革を成功に導く4つのポイント
従業員の多様性や満足度を高めるために働き方改革に取り組んでいるものの、「なかなか上手くいかない」、「成果が目に見えない」という企業も少なくありません。
大切なのは、ただ制度や環境を変えるだけでは不十分ということです。具体的にどのようなポイントを押さえるべきなのか、4つに絞ってご紹介します。
現状の把握とゴールイメージの設定
まずは自社の状況や抱えている問題を把握することが、ゴールイメージの設定へと繋がります。
自社が抱えている課題を明確にし、どのような組織にしたいのか、どのように改善していくのか、といった具体的な目標や道筋が見えるため、最初にゴールを明確にしましょう。
課題に応じた適切なツールの活用
働き方改革では、自社の課題に応じたICTを活用することで労働生産性を高めることが可能です。
例えば、チャットツールやWeb会議システム、クラウド上でデータが管理できるオンラインストレージ、勤怠管理システムなど、さまざまなバリエーションがあります。自社に合った取り組みを検討し、その課題に応じた適切なツールを活用しましょう。
福利厚生の見直し
福利厚生は、給与などの基本的労働条件とは別に、企業が従業員に対して提供する「給料や賞与以外の報酬・サービス」です。例えば、住宅手当や退職金、保養所やレジャーの補助などが挙げられます。
テレワークやフレックスタイム制も福利厚生の一つに当たります。そのため、働き方改革の推進には、福利厚生の見直しが重要です。
結果として、「従業員満足度の向上」や「心身の健康によるパフォーマンス向上」「会社に対するエンゲージメントの向上」が期待できるでしょう。
従業員の意識・行動変革
働き方改革は会社の制度として、形骸化しては意味がありません。従業員自体が「効率を意識しよう」「プライベートを充実させたい」と思わなければ、意識改革や行動変革には繋がらないためです。
このような自社が変革しなければならない必然性を考え、体制や企業文化自体を変革していく必要があることを意識しましょう。
まとめ
働き方改革は、労働者が自分の状況に応じて多様な働き方を選択できるようにした取り組みです。
時間労働の是正、正社員と非正規社員の不当な待遇差の改善、多様で柔軟な働き方の実現など、働き方改革には取り組むべき要素が多いといえます。
そのため、まずは自社の制度やオフィス環境といった労働環境を見直すことからはじめ、本質的な従業員の働きやすさについて考えてみましょう。
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