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日本は、世界的に見ても自然災害が非常に多い国です。台風や豪雨、地震などが頻発しており、甚大な被害が出ています。特に、首都直下地震や南海トラフ地震は、今後30年以内の発生確率が70%以上と言われており、切迫性が高まっています。それに伴い、企業もしっかりと防災対策に取り組まなければなりません。
このコラムでは、災害が発生した際に従業員を守るための対策や、「事業継続」に向けた対策などを解説します。
なぜオフィスの防災対策が必要か
災害に備えてオフィスの防災対策が必要ですが、その理由を具体的に3つ解説します。
法律または条例により定められているため
オフィスの防災対策は、労働契約法や消防法で定められています。
労働契約法では、第5条で「労働者の安全への配慮」の義務があり、労働者が生命や身体の安全を確保しつつ、労働できるように配慮する必要があるとされています。
安全への配慮は、健康被害や労働災害について注目されることが多いですが、近年は自然災害についても重要視されるようになりました。
また消防法によると、第8条で防火管理者の選定や消防計画の作成など、防火管理上必要な業務を行わなければなりません。
人的被害を抑えるため
災害が発生した際に、何よりも優先されるべきなのは人命です。オフィス家具が倒れてきたり、窓ガラスが割れたりと、オフィス内でも被害が発生する可能性があります。
また、避難の途中で階段などから転倒する恐れもあります。このような人的被害を最小限に抑えるためにも、日頃からしっかりと防災対策をしましょう。
物的被害を抑えるため
物的被害とは、業務に必要な設備が何らかのダメージを負うことです。例えばパソコンなどの機器が壊れてしまい、復旧できなくなると、事業の継続が難しくなります。他にも、商品が破損したり水浸しになったりすると、売り物になりません。
物的被害が大きければ大きいほど、復旧にかかる費用がかさみます。日頃からデータのバックアップや、適切な商品管理などを意識して取り組みましょう。
事前にできる災害への備え
事前に災害への備えをしておくと、被害を未然に防げることもあります。日頃からしっかり対策しておくことが大事です。ここでは、火災・地震・水害の備えについて解説します。
火災への備え
オフィスで多い火災の原因は、電気機器によるものです。使い方を誤ると、火災発生のリスクが高まります。
主な原因と対策は次の通りです。
・電気タップの容量を厳守する
電気タップの消費電力を上回ると、火災発生のリスクが高まります。最大容量が記載されているため、使い方を守りましょう。
・照明器具や電気コードの火災対策
照明器具や電気コードは、劣化すると火災発生のリスクが高まります。照明器具は、寿命が10年と言われているので、見た目が劣化していなくても交換することが必要です。電気コードは、一部が断線すると火災を引き起こす可能性があるので、適切な使い方を心がけましょう。
・トラッキング現象の発生を防ぐ
トラッキング現象とは、コンセントとプラグの間に埃が溜まり、それが空気中の湿気を吸収して漏電や火災を引き起こすことです。オフィスで多い火災原因の一つです。
被害を防ぐには、定期的に電源プラグを抜いて掃除したり、使用していないコンセントには、コンセントカバーをつけたりして対策しましょう。
地震への備え
地震が発生すると、建物の倒壊をはじめ、オフィス内で家具が倒れたり窓ガラスが割れたりして、けが人が出る恐れもあります。
大規模な地震が頻繁に発生しているので、しっかりと地震対策を行いましょう。
具体的には以下の備えをしておきましょう。
・オフィス家具の固定
地震によりオフィス家具が転倒すると、怪我人が出たり、避難経路が遮断されたりする恐れがあるので、あらかじめ固定しておくことをお薦めします。
・引き出しにはラッチ付きを採用する
デスクやキャビネットの引き出しには耐震ラッチが付いているものがお薦めです。
ある程度の地震が起こった際に、扉を自動的にロックして、中身が飛び出さないようになっている物です。
・レイアウトの見直し
背の高い家具がデスク周辺に設置してあったり、間仕切りとして使用してあったりすると、転倒して従業員の怪我に繋がる恐れがあります。
背の高い家具の配置には十分注意し、避難経路も考慮したレイアウトにしましょう。
耐震基準の確認
日本では1981年に建築基準法が見直され、新耐震基準が適用されており、震度6~7程度の地震では、建物が倒壊しない構造になりました。
この新耐震基準にオフィスが適合しているかどうか、確認しておく必要があります。もしも、オフィスが旧耐震基準の場合は、地震発生の際に倒壊する危険性が高いので、早めにオフィス移転を検討した方が良いでしょう。
水害への備え
近年、豪雨災害が頻発しており、国土交通省によると、2021年の全国水害被害額は3,600億円にも上ります。
電気機器が水に浸かってしまうと、使用できなくなるので、企業にとって水害への備えは必須となっています。特に、海水が侵入すると、塩分を含む不純物が残るので復旧不可能となります。
被害を最小限に抑えるためにも、しっかり浸水対策をしておきましょう。
・浸水対策用品の準備
防水シートや土のうなど、浸水を防ぐための用品を準備しておくのがおすすめです。
・損害保険の加入
水害は、対策していても防ぐことが難しい場合も多くあります。
万が一に備えて、損害保険には必ず加入しておきましょう。
・窓ガラスの保護
浸水の勢いで、窓ガラスが割れる場合があります。
窓際には物をおかない・飛散防止フィルムを貼るなどして、二次被害を防ぐことも大事です。
ハザードマップの確認
まずは、オフィスがある市区町村のハザードマップを調べましょう。ハザードマップは、被害想定地域や、避難場所、避難経路などの位置を示した地図です。水害だけではなく、地震などのリスクについても掲載されています。
押さえておくべきオフィスの防災対策8選
災害時に従業員の安全を確保し、「事業継続」に取り組むために、企業は日頃からオフィスの防災対策をしなければなりません。ここでは、企業ができる防災対策を8つ紹介します。
オフィス家具・機器の転倒防止
オフィス家具や機器などが転倒すると、従業員が怪我したり、避難経路を妨害したりする恐れがあります。
家具や機器は、専用の器具を取り付けて固定しておきましょう。
オフィスレイアウトの変更
オフィスのレイアウトは、災害の発生を想定して設計しましょう。被害を最小限に抑えるには、通路幅をしっかり確保することが大事です。また、消防隊進入口マークや排煙窓は、家具などで塞がないように気をつけましょう。
食料・トイレ・医療品などの備蓄
内閣府が発表している「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドライン」では、必要な備蓄量は3日分となっています。災害が発生すると、公共交通機関やインフラが停止し、帰宅できなくなったり、必要な物資が調達できなくなったりします。
災害の影響が長期にわたる可能性もあるので、予算やスペースに余裕がある場合は余分に準備しておくと安心です。
非常時のコミュニケーション方法の確定
予め、災害時における従業員とのコミュニケーション方法を明確にしておきましょう。オフィス内の従業員はもちろん、外出中の従業員の安否確認も行う必要があります。
連絡手段は一つだけではなく、複数用意しておくと安心です。携帯電話やスマートフォンが使えなくなった時のために、業種によってはデジタル無線などを準備しておくのもお薦めです。
避難経路・防災対策の周知
災害が発生し避難が必要な場合に備え、従業員全員が避難経路や防災対策を把握しておくことが大事です。防災担当者を決めておき、オフィス内の避難場所・オフィス近隣の避難場所などを従業員に共有しましょう。
避難訓練の定期的実施
日頃から防災対策をしっかりしていても、実際に災害が発生した時に適切な行動や判断ができなければ意味がありません。
「消防法第36条(防火管理定期点検報告)」に基づいて、大規模建築物などに関しては防火管理業務の実施が義務付けられており、年一回以上の避難訓練を実施しなければなりません。
帰宅困難者の支援
就業中に災害が発生すると、従業員が帰宅できなくなる可能性があります。防災グッズ・食料の準備、オフィスの耐震対策、防災マニュアルの策定、安否確認システムの導入など、帰宅困難者を支援する対策をしておきましょう。
データの定期的バックアップ
災害の被害状況によって、パソコンなどの機器が使用できなくなる場合があります。最悪の場合、破損してデータが消失する可能性もあります。
重要なデータや顧客情報などが消失してしまうと、企業にとって大きな損失になり、事業を継続することが困難になります。日頃から、定期的にデータのバックアップを取っておいたり、外部サーバやクラウドへ保存したりなどの対策が必要です。
管理者がオフィス防災で気をつけるべきポイント
ここでは、防災管理者がオフィスの防災対策で気を付けるべきポイントを3つ紹介します。
個人デスクの防災の推奨
オフィス全体としてだけではなく、個人デスクも防災対策しておきましょう。
被災時には、社内の防災担当者は対応に追われます。備蓄品等の配布がスムーズに行われるかもわかりません。そのため、個人デスク周辺に防災グッズを常備しておくと、もしもの時にすぐに取り出せるので安心です。
また、非常用の簡易トイレも一緒に備えておくと、断水してトイレの水が流せなくなった時に役立ちます。
個人任せではなく、企業として防災対策・備蓄・防災グッズの更新などを推奨し、共有しましょう。個人デスクの防災を強化することにより、従業員1人ひとりの防災意識も高まります。
定期的な備蓄・防災グッズの更新
防災備蓄品や防災グッズは、定期的に見直し更新しましょう。備蓄向けの食料品は、賞味期限が長めに設定されていますが、定期的に確認し賞味期限が切れないようにする必要があります。
近頃は備蓄品として保管してある非常食や保存水を日常生活で消費し、使った分を買い足していく「ローリング・ストック」という管理方法もあります。また、さまざまな管理サービスもありますので、活用を検討してもよいでしょう。
また、懐中電灯の電池なども、入れっぱなしにしておくと液漏れや電池切れの恐れもあるので、定期的に確認しましょう。
防災体制の最適化
防災体制の常識は、変化していくものです。オフィスの防災体制をしっかり整えたとしても、適宜見直し、体制を最適化することが大事です。
まとめ
火災・地震・水害など、災害の発生はいつ起こるかわかりません。
しかし、災害が起こった時に備えて防災対策を行うことで、被害を最小限に抑えることができます。従業員の安全を確保し、事業を継続するために日頃からしっかりと対策しておきましょう。
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